プレスリリース 2024/02/13
「Li金属負極を用いた全固体電池を作製 -25 ºC~120 ºCでの動作も実証」
J. Mater. Chem. A, 12, 5269-5281 (2024)
地球温暖化、エネルギー枯渇、環境汚染など我々人類は多くの課題に直面しています。これらの課題を解決し、持続可能な社会を構築するため、私たちは、無機化学、電気化学、触媒化学、合成化学の学問分野に立脚し、様々な研究に取り組んでいます。
金属酸化物などからなる機能性無機材料は、組成制御や精密な合成による原子・ナノレベルでの構造制御により、バルク、表面、界面の機能を最大限に引き出すことが可能です。私たちは、これらを駆使して新たな機能を付加した、最先端のガスセンサ、超高性能酸素分離膜、次世代の全固体電池など、これまでにない新しい化学機能デバイスの創製に挑戦しています。
私たちは、これらの研究開発を通して、材料・デバイスの構造・物性の高度な解析により機能発現メカニズムを理解するとともに、先進デバイスの実現に資する設計指針を構築し、産業展開を目指しています。
n型半導体である酸化スズナノ粒子は、表面におけるガス分子との反応により電気抵抗値が大きく変化することで、ガスを検知できます。最近では、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を応用した超小型センサを用いて、100億分の1個のガス分子の検知に成功しています。
現在は、更なる高感度化、選択性付与に向けた学理を構築するため、精密なナノ構造制御手法の開発やレセプターやドーパントの種類や導入法がセンサ特性に及ぼす影響について詳細に検討を進めています。
報告例
2022年度公財団法益人JKAの補助事業として、「粒子間細孔の階層的設計による微量ガス分子の迅速な識別検出 補助事業」に関する研究を実施しました。
(代表:末松昂一)
研究内容
非侵襲な医療診断やヘルスケアの実現に向けて、半導体ガスセンサによるVOCガス検出能向上が期待されています。そこでガスセンサには高感度検出、ガス選択性、迅速応答性が求められます。
本研究では、ガスセンサにおける粒子間細孔をナノレベル制御する手法及び粒子間細孔によるセンサ材料、反応特性への効果について検証しました。具体的にはSnO2ナノ粒子とナノロッドを合成、その表面にPdを担持した際のPd存在状態やエタノールガスの反応性について検証し、ナノレベルの細孔構造、粒子形状の効果を検証しました。
研究成果はこちら
酸化物イオンを中低温域で高速に輸送するc軸配向アパタイト型ランタンシリケートを固体電解質に用いた、酸素分離膜や各種ガスセンサの研究を企業と共同で進めています。いずれの場合も、気相/固相界面における電荷移動反応および電極/電解質界面におけるイオン輸送がその性能の鍵となっています。
現在は、更なる高性能化に向けて、新規な混合導電性電極の開発や湿式法を用いた界面修飾手法の開発に取り組んでいます。
報告例
脱炭素社会実現に向けて、蓄電池への期待が高まっています。また、宇宙空間など極限環境で使用可能な新しい電池の開発も強く望まれています。本研究室では、Liイオン伝導性酸化物の組成制御により低温焼結可能な固体電解質材料を開発しました。さらに、開発した固体電解質と正極を同時に焼結し作製した、一括焼結型全固体Liイオン電池が室温で動作することも実証しています。
現在は、更なる高エネルギー密度化、サイクル特性向上に向けて、電極/電解質界面の制御、正極材料の構造安定性・混合導電性向上、電極の微細構造設計、新規酸化物負極材料の探索について検討を進めています。また、この技術をLi空気電池にも展開していきます。
報告例
J. Mater. Chem. A, 12, 5269-5281 (2024)
J. Mater. Chem. A, 11, 15681-15690 (2023)
J. Mater. Chem. A, 11, 2042-2053 (2023)
Anal. Chem., 90, 11219-11223 (2018)